第1章

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「俺の再生医療を、華菜に使ってもいいだろうか?」  人体での実験を禁止された研究。森で見たカメのように、失った部分を補足し寄生する植物が存在する。  華菜は肩から上しか、肉体が残っていない。華菜にその植物を移植した場合、どこまで人間として再生するものだろうか。 「華菜からの回答かもしれないけれど、華菜は、頭脳は肉体に寄生したものだと」  どういう回答なのか?華菜は時々難しい。 「冬樹、夕食は芋焼こうか」  興野は芋の匂いが嫌いで食べない。居ない時に食べるのも楽しい。  華菜を再生したとしても、元の華菜にはならない。でも、会話して生きているのを確認してしまうと、ずっと存在していて欲しいと願ってしまう。 「友秋、俺、上の階の部屋を引き払って、森の中に家を建てようと思う」  森の中に建てるのか。許可が出るのだろうか。 「米花からは地下にシェルターを造るということで許可を得た。ビルに何かあった場合の拠点造りの一環として扱うそうよ」  それだけではなく、冬樹の存在が色々と問題にもなっていた。人工の手足は、志木森の研究成果でもあるが、使われているのは植物。ビルの中で動く植物の存在は、許されないらしい。  ビルの外の所在ならば、許すのか。 「分かった、協力する」  都森では森の中で生活していた。都森には帰れないが、そこでの知識は役に立ちそうだった。  家に帰ると、暖炉で芋を焼き、バターを付けて食べた。芋は、公園の一角を菜園にして、勝手に育ててしまった代物だった。 「おいしいな」 『華菜も食べたい』  華菜に言われると弱い。できることなら、食べさせてあげたい。 『アキ兄ちゃん、冬樹。私の特許があるの。その資金で、冬樹のおうちを建てて。もう、設計も建設も依頼しちゃったけどね。華菜の居場所も造ったから』  華菜も成長しているらしい、いつまでも幼児のイメージでいたが、勝手に住居を依頼するまでには成長していた。 『華菜の大好きな、ピンクのカーテンとピンクの絨毯も注文したの』 「…止めてください」  住むのは冬樹だ。 『それから、屋根裏に展望室も』  あっ、ふいに涙が零れた。華菜と冬樹と、俺とで夏休み店の手伝いをして、望遠鏡を買った。屋根裏を改造して、展望室と名付けた。  沢山の星があるのに、その名前も一つも知らない。三人で本を買って、毎日、星の名前を覚えた。
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