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俺の身長は、その後も伸び、やっと興野の肩にまで到達した。こうなると、興野も容易に担ぎ上げることも出来ない。ちゃんと、一人として扱うしかないだろう。
学校に行くと、いつものメンバー。前に都甲で横に北見。
「あのさ、百鬼、言いにくいのだけれど」
俺は伸びた身長が、とても嬉しかった。
「どうした?」
「百鬼が、美少年だったとは…」
美少年って何だ?
「本当、今まで子供子供していて気が付いていなかったけど、美人ってやつだったとは…しかも最上級品の別嬪サン。厄介事が増えたな」
都甲まで、まじまじと俺の姿を見る。
何がどうなのだ。でも、周囲の反応が違ってきたのも確かだ。トゲトゲした視線は、最近は余り感じなくなってきた。
「隣を歩きたくないよな。何と言うか、違う世界の住人のようでさ」
外見で中身を評価され続け、やっと逃れられると思ったら、又何かあったのか。
結構な勢いで二人に苛められたが、要するに健康的な青少年風に成長してゆくと想像していたら、違う方向で驚いたらしい。
「でも、中身は問題児のままなんだよな…」
問題児って何だ。怒りがこみ上げたが、ぐっと我慢いた。大人だからな。
「最近、興野の姿を見ないけど、どうしたの?」
興野は仕事だと言って、最近、余り家に居ない。冬樹が居るので安心しているのかもしれない。
「仕事だけど、俺も詳しい事は知らない」
任務については、興野は一切俺には詳細を話さない。
「仕事なら、そうなのかもしれないけど。寂しいね、アキちゃん」
成長しても、開いてしまった外見の年齢差が縮まるとこはないということに、最近気が付いた。興野は、どんどん大人になる。
「それと、華菜ちゃん。世界中にマークされているよ」
都甲が声を潜める。
「分かっている」
どんなセキュリティも華菜には効き目がなかった。電気が通じていれば、通過し、意志を持って操作する。データで操作するタイプではなく、存在が通信で移動してしまうのだ。
世界の基準を塗り替える存在。抹消するか、保護するか。
「華菜を世界から隔離する」
華菜はちゃんと予測して、隔離施設を森の建物に造っていた。
「それだけで、納得してくれるかな」
都甲が、遠くを見ていた。都甲も情報局の人間だ。情報に対する怖さを知っているのかもしれない。
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