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都甲に連れられて店内に入った途端、都甲が内部の階段を駆け下り、下の階への抜け道の扉を開けた。
「彼らは他国の人間だ。冬樹と北見も保護した」
下の階を通り過ぎ、どこかの事務所に連れ込まれた。そこには、北見と冬樹もイスに座っていた。
「君たちを、他国に持ち出されるのもシャクなんでね」
都甲が、軽く笑う。
「興野が居ないと、コレだからな。すぐに、拉致を狙った人物のオンパレードだよ」
都甲の知らない面が見え隠れしていた。
「冬樹、君はこっちの道に進むか?友秋を守りたいのなら、武力だけじゃ無理だよ」
冬樹が真剣に悩んでいた。
「何しろ、そっちの二人は研究バカだ。他のことには目がゆかない」
北見は研究バカだと思うが、俺もそうなのか?少しショックだった。
殺風景だが、合理的な部屋だった。四方や天井にも抜け道があるようだ。
「考えさせてください」
冬樹が、何かを考えているようだった。
「冬樹、好きな道に進め。俺は、自分のことは自分で何とかする」
「そうだ」
北見も賛同しているが、冬樹に冷ややかに見られていた。
再び電車で一基ビルに戻ったが、しっかり北見は買い物はしていた。
電車の中でも、何かを組み立てしていた。そのままエレベータに乗り込んでも、何かを組み立て続けていた。
「冬樹、暫く興野は留守だよ。家に泊まるか?」
冬樹の森の家も完成していた、後は引っ越すのみだ。
「そうだね」
森の近くならば、人が近寄れば森の気配で分かる。植物は人を認知している。
家に入ると、ひんやりとした空気が立ち込めていた。何か違和感がある、部屋に風が吹いていた。誰か、家に入った。
「冬樹、そっと、外に出ろ」
さりげなく外に出ると、ビルの方向に走り始めた。理由は分からないが、家には何か仕掛けられている。感だけなのかもしれないが、この感は蓄積されたデータによる予測だ。
ビルの前に到達し、しかし立ち止まる間はなく、家が爆破されていた。多分、殺そうとしたのではなく、脅しだったのだろう。殺しならば、ドアを開けた瞬間に爆破していただろうから。
「引っ越し、早まったな」
もうコメントのしようがない。
爆破の犯人は捕まらず、俺は、華菜の建てた森の家に住むことにした。華菜はピンクにこだわっていたが、奥に建てられた小さな建物には、ピンクは一切無かった。
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