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華菜は既に、脳を世界中に分散していた。世界中に散らばる脳、有名人の脳、それら全てを抹消することは不可能だろう。
人の脳に巣食う存在。そんなものを公表できるわけもない。
でも、一高どうかしている。既に、一高では暗黙の事実であった。
「一高も怖いな」
「全くだな。華菜に頼まれて、通信器具を造ったが、自分を電気信号に変換するとは思わなかったよ」
協力していたのは、北見であったのか。人間を電気信号に変える技術、それが又、俺の名前で発表されていた。華菜曰く、俺に禁止と言われる前だったのだそうだ。
俺は機械が得意ではない。発表されても、その分野の専門家ではない。
妹が、制御不能の化け物に近くなってしまった。でも、今もかわいい。
溜息を何度もついていると、北見が困ったようにこちらを向いた。
「大丈夫だよ、百鬼。華菜は、長く存在できない。分散し過ぎだ、アイデンディティを保てない」
北見も甘い。華菜は、最初から化け物の頭脳だったのだ。
いつもの通りに教室の自分の席に座ると、都甲が居なかった。周囲を探してみても、見当たらない。休みなのかと、窓から下を見ると、グランドで先生と何か話している都甲を見つけた。
次の瞬間、校舎の一部が爆破されていた。
『大丈夫だよ、アキ兄ちゃん。あれは音楽室で死者は居ないよ』
一高が爆破されたということが一大事なのだ。しかも、都甲を待ってしまってここに居たが、俺は本当は音楽室に移動だったのだ。
避難して一高から出ると、乗ろうとしたエレベータが故障した。これはやはり、狙われているのは俺だ。
『ごめんなさい。アキ兄ちゃん。華菜が標的みたい』
その言葉を残して、華菜が消えた。
華菜が消えて数日後、興野が戻ってきた。家が跡形もなく消えていたことには驚いたようだが、冬樹の家には更に驚いていた。
「森の中に、よく許可が出たよ」
興野は軍部にも部屋を持っているので、そこに住むという。
「興野、何だか遠くなったね」
「何、言っている。保険で、跡地に家が建つよ。暫しの間だけだ」
俺は、弟妹を助けるという、軍部に居る理由は無くなった。兄貴達はどうするのか分からないが、俺は軍部を抜けようかと思う。
「興野、俺は軍を辞める」
「そうか」
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