恋の音が聴こえないanother side

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 両手で口許を押さえ、彼はオレの口の中で果てた。  懐かしい味を味わいながら、オレは下からすべてを見ていた。  嫌だと言いながら意外と呆気ない彼が羞恥に震え、快感に堪えるさまを冷静に見続けていられるオレこそが、本気で呪われている。  傷つけたい。  痛めつけたい。  刻みつけたい。  甘い感情なんてどこにもない。  オレはなにがしたい?  どこに向かってる?  この闇に出口はあるのか?  久しぶりだろうその快感に溺れてしまった自己嫌悪か、顔面蒼白で立ち尽くす男の目に映るよう、これ見よがしに濡れた口許を舌でペロリと拭った。  狙いどおりにオレを見下ろしてくる震える瞳には、痛みを植えつけて止まない恐怖の色が滲んでいる。  この痛みすら、懐かしい。  過去ってなんだ。  でたらめにも程がある。  吹っ切れたってなんだ。  なにも終わっていない。  だから、なにも始まらないんじゃないのか。  
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