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青年が遠くを見るかのような儚げな表情を浮かべたの
を見て、四人はいっそう不安な顔を見せる。
そんな四人の顔を見て、青年は困ったように頭を掻き、
今度ははっきりと強い口調で言った。
「みなは僕を信じてくれないの?僕だって二度とあん
なことは繰り返したくないし、今の僕にはみんながい
る。違うの?」
拗ねたような責める口調に四人は慌てる。
しかし直ぐにいつもの無表情に戻った男が四人の言葉
を代表して言った。
「違いません、カグヤ様。私たちはカグヤ様の僕
(しもべ)です。いつでも私たちに出来ることなら
手助けいたします」
自分たちの主が大丈夫と言うのだ。これ以上僕である
四人が語ることなんてない。
何しろ、誰よりも柔らかい雰囲気を醸し出しているが、
この中、いや使い魔全体のなかで最も強いのが彼なの
だから。
パワー・スピード・技術何においても他とは頭一つ
飛び抜けている。
しかしここまで四人が着いてきたのは、"力"だけでは
ないだろう。
「僕なんてやめてっていつも言ってるでしょ。僕たち
はみんな家族なんだから」
青年の心の器にみんなは魅了されたのだろう。
周りの四人にもう心配そうな顔はなかった。
魔方陣の輝きも一層強くなり、視界を遮ろうとする。
しかし誰一人としてめを閉じようとする者はいない。
主の姿を目に焼き付け、送り出そうとしている。
「次こそ君の好きにはさせないよ、ルシファー」
青年がポツリと呟いた次の瞬間には、魔方陣と共に青年の姿はなかった。
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