セピア色の思い出1 -柚希side-

4/23
前へ
/265ページ
次へ
 見上げてみるとあたしと同じ北陵の制服を着た男の子。  そう、“男子”というより“男の子”と言った方が正しいような童顔の少年が立っていた。制服を結構着崩している人が多い中でタイまできっちり締めた礼儀正しい姿をしていた。かっこいいではなく・・・かわいいと言った方がしっくりくる。 「すみません。あたしのスマホ。」  取り上げると何も考えずあたしは制服の上着のポケットにスマホを突っ込んだ。  少年は(そう表現した方が似合うよね・・・)少し不機嫌そうに無言のまま立っていた。結局あたしは遅刻が怖くてろくに彼のことを見ないで足早にその場を去った。  このときもっと彼のことを観察しておけばって思うことになるんだけど・・・。
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加