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ゴキブリとカマカリが合わさったような虫の形状に寒気が走る少女。
「大丈夫、コースターが走り出したらどっか飛んでくよ。でも、その虫……初めて見るなぁ」
父親が笑顔でそう言った瞬間、その虫は少女の耳元で鳴き始める。
「キリキリキリキリキリキリキリキリ……キリキリキリキリキリキリキリキリ……」
「うわっ、何この頭が痛くなる鳴き声!」
少女は眉間に皺を寄せて顔を歪ませた。
「えっ、この虫鳴いてるか?パパ、全然聞こえないけど」
父親は少女の顔を不思議そうに見つめる。
「何でこの音が聞こえないの?スごい音ジャないノ……」
少女は頭を抱えながら父親を睨む。
その時、少女の黒眼が上下左右に振幅して居る事に父親は気付いた。
「おい……亜美、お前……大丈夫か?」
その言葉を父親が掛けた時、少女は首を狂ったように上下させる。
ゴキッ……ゴキゴキッ……
少女の肩が外れたような音が父親の耳に響く。
「おい、亜美!!すいません、止めてください!」
父親が必死な形相で叫ぶが、既にコースターは急な傾斜をカタカタと上り始めていた。
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