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父親は焦った表情で叫び続ける。
「止めてくれぇぇぇ!」
その隣で苦しむ様に身を悶えさせていた少女は、突然力が抜けたように動かなくなった。
「亜美……亜美ぃぃぃ!」
父親が涙を流しながら名前を呼んだ瞬間、少女は無表情で顔を上げ、安全バーに手を掛けて持ち上げる体勢になる。
「良かった……大丈夫なんだな?ん、何をしてるんだ?そんなことしても出れないぞ……。とりあえず止まったらすぐに病院へ……」
安全バーにグッと力を入れる少女に父親が優しく話し掛けた。
それと同時に、ギギギッと言う音が響いて安全バーが上がっていく。
「ば、馬鹿な……。ちゃんと閉まって無かったのか?」
父親が青ざめた顔で自分の安全バーを持ち上げようとするが、微動だにしない。
「キリキリキリキリキリキリキリキリ……キリキリキリキリキリキリキリキリ……」
父親には聞こえない声を漏らしながら、少女は安全バーを力づくで持ち上げた。
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