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「亜美……お前……」
父親は目の前で起きている現実が受け止めきれないと言った表情で、ただ口を大きく開いたまま停止していた。
少女は青い血管を浮き出した腕で、上がりきった安全バーの隙間から身体を滑り込ませるように脱出する。
グルリと首を回転させて足下に移動し、狂った表情を父親に向ける少女。
数分前とは明らかに違う娘の顔に恐怖を抱く父親。
「何なんだ……悪い夢なら、覚めてくれ」
父親がそう呟いた瞬間、ジェットコースターは勢い良く下降していく。
少女は吹き飛ばされないように父親の安全バーを掴み、コースターの動きに身を任せた。
「止めてくれぇぇぇぇぇ!!
娘が死んでしまう!!」
父親が涙を流しながら絶叫した瞬間、コースターは徐々にスピードを緩めて停止する。
止まると同時に、父親と少女の後ろに乗車していた客がざわめき始めた。
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