序の章

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2019年6月21日 女性の異常行動に関するニュースは毎日正午に全チャンネルで放送するようになり、全国各地で緊急避難警報が発令される。 関東地方から広まったこの被害は、既に本州全域に広がりつつあった。 各都道府県には地下シェルターが作られ、自分の身や家族を守る事だけに集中する為に仕事を辞めた人間が津波のように押し寄せる。 主要都市部でも狂乱事件は発生し、地獄絵図のような状況が全国各地で起こり始めた。 内閣総理大臣である安田はこの日、正午になると同時に緊急会見を開き、虫の研究結果をテレビを通して伝える。 「日本国民の皆様、我々を恐怖に陥れている狂乱事件に関して判明している事をお伝えします。 まず、初めにお詫びをさせてください。 アメリカの生物調査国際機関はこの虫の研究を中断することを正式に発表しました。 現在、アメリカに送られた虫は殺処分されたとの報告も受けております。 虫の名前は、日本昆虫協会により、狂鳴虫(きょうめいちゅう)と名付けられました。 鳴き声によって人を狂わせるという現状からです。 今は、この狂鳴虫の完全駆除が急がれる事態となっております。 調査の途中経過までで判明した事を、ご報告させて頂きます。 大きな問題としましては、この狂鳴虫の鳴き声は男性には聞こえず、女性にしか聞こえないと言う点。生物調査国際機関によると、どうやら鳴き声は超音波のようなモノに近いらしく、女性ホルモンに特殊な影響を与えるとの報告がありました。 そして、この鳴き声を聞き、狂乱した女性の声を聞いた周りの女性も狂乱してしまうという間接的な狂乱が起こりうるという事実、この2点です。 私達はここで未来を諦める訳にはいきません。 なるべく外出は控え、外部との接触を控えるようにするくらいしか、今のところ予防策はありません……。 何か解り次第、すぐに報告させて頂きます」 その発表から3ヶ月後、日本は国際連盟から強制的に排除され、輸入や輸出はもちろん、国交の全てが停止した。
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