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無機質な、灰色の空。視界に広がる世界は、一体なんだろうか。
今まで見たことのない景色―――そう、例えるならば未来都市のような……。
「―――未来都市ぃっ!?」
少女の金切り声が辺りに響き渡った。言動から察するにこの少女、この時代の人間ではないようだ。
恐らく彼女のペットであろうクワガタという昆虫は、暢気なことに少女の肩を這い上がっていた。いや、クワガタの心境としては振り落とされないための苦肉の策なのかもしれないが、少女はそんなことを気にする余裕がない。
「……ほんとに、ここどこ……?」
さて一体なにが起こったというのだろう。
「ええと……まず状況を整理して……」
無理だ。
それは致し方のないことだろう。そもそも彼女は、ただ愛しいペットのクワガタとじゃれていただけなのだ。
「―――……うおおぉぉぉおおおっ!!」
姿の見えない恐怖に襲われたか、少女が突然手のひらに乗ったクワガタにチョップをかました。もしクワガタが人の言葉を理解し、はたまた話すことができれば、クワガタ(仮に彼と称しよう)は酷く理不尽だと憤慨するだろう。
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