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「戻れ! さっさと私を元の世界に戻せぇええぇぇ!!」
叫びながら愛しかったはずの彼にチョップをし続ける少女の耳に、突然別の声が届いた。
「ちょっとちょっと! そこのリアス式歯並びの君!」
振り向いた先にいたのは、現代生け花みたいな髪を振り乱した警官だった。現代警官と同じような帽子を被っているから警官なんだろうが、異様な髪型のため普通に不気味だ。
と、それとは別の理由から、少女の目がギッと吊り上がった。
「リアス式歯並びで悪かったな! コンプレックスなんだよごちゃごちゃ言うなぁっ!!」
コンプレックスである歯並びのことを上手く表現されたためだった。
「その変な警官、今すぐ名前言え! お前の祖先に悪戯してやる!」
―――とは流石に言わず、苛々したままの表情で「クワガタにチョップしていただけですがなにか」と言い切る。
話を聞こうとしたらしい警官だったが、彼女の手に乗っているクワガタを見るなり「あぁっ!?」と叫んだ。
「じ、十年前に滅びたはずのクワガタだ!」
「え、クワガタって滅びるの!?」
全く関係ないところに食い付く少女である。
クワガタの存在を認めて少女の言い分に納得したらしい警官は、しばらく腕を組んで考えていたが、やがてこう言った。
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