第肆譚 山南敬助の策略

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まさか…いや、しかし… 「新八さん」 沖田・斎藤ほか巡察一行とまみえた後…やはり彼ら一行はいつもの倍以上時間がかかっていた…、明日夢は永倉に声を掛けた。 「ふと気になったんですが、”巡察”と聞けば誰よりも先に門の所で待っているはずなのに、今日は随分と遅かったですね。何かあったんですか?」 「あー、ああ。玄関に行く途中山南さんと出くわしてさあ。”菓子を作ったから味見してくれ”って頼まれたんだ。それめちゃめちゃ美味くてさあ、三つぜーんぶ食っちまった。で、巡察の事思い出して慌てて出てきたんだ」 「………」 「へー。んな美味い菓子だったのか。今度俺も山南さんに」 「駄目です!食べないで下さい。新八さんならまだしも、左之助さんはもっと駄目です」 「えー、なんでだよ」 「四の五の言わない!さっさと巡察を終えて屯所に帰りますよ」 「山南さん!」 「おや明日夢君。もう巡察は終わったのですか?」 巡察を終え、段だら羽織等を身に付けたまま、明日夢は副長・山南の部屋に直行した。その主は、食後の一服を悠々と楽しんでいる。 「”終わったのですか?”ではないでしょう!”人体実験は止めてほしい”と何度も言っていますよね?仮に安全性が確立していたとしても、せめて巡察時間外にしてください!」 「すみませんでした。完成したらすぐに試してみたくなってしまいまして。それに山崎君の報告では、まだ敵方に動きはないとの事でしたので」 苦笑いする山南。謝罪を口にしてはいるが、今までの常習性を考慮すると、まったく懲りていなさそうだ。 山南はその高い知識から、実家が医者である山崎と共に新撰組の医学方を兼任している。 「…で、今回は新八さんに何の薬を盛ったんですか?」 ため息をつきつつ、明日夢はマッドサイエンティスト①に問うた。が、 「一緒にいた明日夢君なら、もう見当はついているんじゃありませんか?」 笑顔で問い返されてしまった。 「……惚れ薬…でしょうね、十中八九」 永倉の今日の行動は、原田に恋する乙女?そのものだった。 「ご名答…と言いたいところですが、わずかばかり違います。ただの惚れ薬ではありません」 そう笑うと山南は、透明な袋に入れられ緑のリボンでラッピングされた、丸いクッキーを取り出した。三枚入りで…ゼリービーンズだろうか。赤いジャムの様な物が中央に埋まっている。
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