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「取り敢えずやかましいですし、後半の台詞が気持ち悪いです。ヤケ酒に付き合ってあげますから場所を替えましょう」
明日夢は永倉の腹を一踏みし、そのまま足で蹴り転がしながら永倉ルームに向かった。勿論、彼がヤケで散らかした恋文たちも忘れない。
「明日夢ぅう…ヤケ酒に付き合ってくれるんじゃなかったのかよぉお…」
「昼間っから酒を飲む巨魁は、過去に一人で十分です」
そう言うと明日夢は、目を伏せて茶をすすった。
「加えて、明後日から兄上と共に江戸へ行き、平助と合流して隊士募集等を行うのではなかったんですか?”明日支度する~”なんて余裕こかしてると、必ず忘れ物等しますよ」
「…」
ぐうの音も出ないのか、顔を歪める永倉。
「まあ、”ヤケ酒”と言った手前がありますから、この酒粕饅頭で我慢してください」
「ちくしょおぉおお!」
再びヤケになった永倉は、次々と饅頭を口に放り込んでいった。
「別に何個食べても構いませんが、詰まらせるなどといった間抜けな羽目には」
「んー!!んー!!」
が、次の瞬間には、胸を叩いてのたうち回る。
「言ったそばから何やってるんですか。ほら、お茶ですよ」
ため息をついた明日夢は、急須から茶を注ぎ、彼に渡した。
「……ふう、生き返っ…って、あっちぃな!!あちちあちち!!」
「そりゃあ、沸かしたて淹れたて注ぎたてですから」
「殺す気か!!」
明日夢の方を掴み、ガクガク揺らす永倉。
「どうです?恋文の件に関しては少々落ち着きましたか?」
「へ…?」
事の発端がすっかり抜け落ちてしまっていたのか、永倉はキョトンとした表情を浮かべた。
「あ、そうだ!恋文!」
「駄々こねるのもいい加減にしなさい」
「ぶっ!!」
再び暴れそうになる気配を察し、明日夢は彼の頭にハリセンの一撃を食らわせた。
「いい歳こいた大人がみっともないですよ」
「だって俺もモテてーよ!左之も土方さんもあんなに貰ってさあ!平助にも明日夢にも届いてたじゃねーか!ハジメはまだ分かるが、あんな総司にも届いてるんだぜ!?」
「まあ、総司に関しては私も同感ですが、色恋に興味のない私にとっては、送ってくれた相手に申し訳ないというか…」
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