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「くっそー!いらねえならそのモテ度、俺によこしやがれ―!!」
再びガクガクと揺する永倉。そんな彼に明日夢はしれっと言い放った。
「簡単にやり取りできるなら、当の昔にやってます」
「ちくしょおぉおお!!何で俺はモテねーんだよぉおお!!」
拳を畳に打ち付け、再びごねる永倉。今日でもう何度目だろうか。しかし同じ泣く仕草なら、身体を丸めてめそめそと泣く兄上の方が、熊のようで可愛い気がする。
「…不公平だ。世の中は不公平だ…」
泣く声が小さくなったのを感じ、明日夢は頭の中を目の前の出来事に戻した。
四つん這いになっていたはずの永倉が、胡坐をかき、腕組みをしている。
「よく考えてみろよ!”ピ―――”とか”ピ―――”とか”ピ―――”とか”ピ―――”までは、俺まだまともだったじゃん!堅物というか兄貴分というか、そんなキャラだったじゃん!”ピ―――”に至っては、兄貴分に加えてモテキャラだったじゃん!色気担当だったじゃん!」
永倉はどこを向いてるかって?明後日の方向である。
「なのに、別ンところじゃ扱い酷くねーか!?”ピ―――”じゃ平助ばりのチビだし、”ピ―――”じゃ翁シルエットで終わったし、”ピ―――”じゃ残念なサブキャラ扱いだったし!最近じゃ登場する前に完結してんじゃねーか!!俺の存在はぐへっ!!」
「でかでかとメタ会話をするんじゃありません」
再び永倉の頭をハリセンでひっぱたく明日夢。世界の崩壊とクレームの嵐を引き起こしたいのかキミは。
「明日夢…第壱譚やり直そうぜ…。あんなのが初登場シーンなんざ俺は認めねえぞ…」
大の字で畳に突っ伏した永倉がそう言った。余談だが、さっきからちょくちょく登場するこのハリセン。永倉がなかった事にしたい第壱譚で折れた巨大笏に代わって使用する事になった、明日夢の新たな相棒である。
それはさておき、
「あれは事故です。仮になかった事にしても、新八さんの初登場シーンが腐女子よだれのあのストーリーになるだけですが」
「違う!あれも事故だ!山南さんに毒盛られただけだ!…いや、そうなると”事故”じゃなくて”事件”だな」
「どちらにせよ、訂正したいのなら自身でタイムマシンでも発明してください」
そう言うと明日夢は恋文の束を抱え、立ち上がった。
「ストレス発散も済んだでしょう。私はこれから該当者にこれを配達してきますので」
「…なー明日夢ー。お前、色恋に興味ないんだろ?」
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