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「うわっ!!」
「ぐああ!!」
複数の叫びと共に、衝突する音や物を突き破るような音が、朝早くから屯所中に響いた。
「何事ですか!うわっ!!」
敵襲かと思い、刀を手に廊下に出る明日夢。しかし飛び出したはいいものの、床板が抜け落ち、下の地面に尻もちをつく。
「痛たたたたた…ケツが…」
「近藤助勤んんん~…」
そんな中、明日夢の忠犬的男子・山野が、おぼつかない足取りでやって来た。そして明日夢同様に床が抜け落ち、その穴にハマる。
「大丈夫ですか山野君。…よくよく見れば、この状態になる以前から怪我をしてるようですね」
なんとか穴から脱出し、明日夢は彼の下によった。
「ううう~近藤助勤んん…そうなんですよ。床板が踏み上がって顔面に当たるし、壁に寄り掛かれば、それがどんでん返しになって背中を打つし…」
「貴方の背にいるのは三十郎さんですか?」
山野に肩を貸される形で一緒に落ちているのは、副長助勤を務める谷三十郎だ。気を失っているうえ、頭には大きなこぶを作っている。
「はい。倒れてたトコを丁度発見したので、医務室に連れて行こうと。近くに金ダライもあったので、天井あたりから谷助勤の頭めがけて落ちてきたんでしょうね」
「…」
「あと松原助勤が、天井から登場した丸太に突き飛ばされるトコも見ました」
「…」
松原忠司も副長助勤の一人。柔術に長け、師範を務めている人物だ。
「あと、井上助勤が戸板に苦無で縫い付けられてたり、原田助勤が宙吊りになってたり…」
「…いつから新撰組屯所は忍者屋敷になったんですか…」
こんな山野の報告を聞いているうちに、明日夢の頭には痛みが発生していた。
こんな事をするのは、新撰組内において奴らしかいない。
「”いつから”って、今日からですやでー」
「やでー」
明日夢たちの会話を聞いていたのだろう。変な関西弁を話す容疑者①と、カメラを手にした容疑者②が天井から顔を出した。いや、言い分と所持品、そして日頃の行いから考慮すれば、もう実行犯扱いしても誰も文句は言わないだろう。
「”やでー”じゃない!今日は兄上や平助が新しい隊士を連れて帰隊するんですよ?なのに屯所をこんな忍者屋敷みたいにして…」
「”みたい”じゃないですよ。忍者屋敷にしたんです。トラップ盛りだくさんにして。ちなみに烝君監修です」
「無駄に筋金入り!?」
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