第陸譚 土方歳三の表裏

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「うわっ!!」 「ぐああ!!」 複数の叫びと共に、衝突する音や物を突き破るような音が、朝早くから屯所中に響いた。 「何事ですか!うわっ!!」 敵襲かと思い、刀を手に廊下に出る明日夢。しかし飛び出したはいいものの、床板が抜け落ち、下の地面に尻もちをつく。 「痛たたたたた…ケツが…」 「近藤助勤んんん~…」 そんな中、明日夢の忠犬的男子・山野が、おぼつかない足取りでやって来た。そして明日夢同様に床が抜け落ち、その穴にハマる。 「大丈夫ですか山野君。…よくよく見れば、この状態になる以前から怪我をしてるようですね」 なんとか穴から脱出し、明日夢は彼の下によった。 「ううう~近藤助勤んん…そうなんですよ。床板が踏み上がって顔面に当たるし、壁に寄り掛かれば、それがどんでん返しになって背中を打つし…」 「貴方の背にいるのは三十郎さんですか?」 山野に肩を貸される形で一緒に落ちているのは、副長助勤を務める谷三十郎だ。気を失っているうえ、頭には大きなこぶを作っている。 「はい。倒れてたトコを丁度発見したので、医務室に連れて行こうと。近くに金ダライもあったので、天井あたりから谷助勤の頭めがけて落ちてきたんでしょうね」 「…」 「あと松原助勤が、天井から登場した丸太に突き飛ばされるトコも見ました」 「…」 松原忠司も副長助勤の一人。柔術に長け、師範を務めている人物だ。 「あと、井上助勤が戸板に苦無で縫い付けられてたり、原田助勤が宙吊りになってたり…」 「…いつから新撰組屯所は忍者屋敷になったんですか…」 こんな山野の報告を聞いているうちに、明日夢の頭には痛みが発生していた。 こんな事をするのは、新撰組内において奴らしかいない。 「”いつから”って、今日からですやでー」 「やでー」 明日夢たちの会話を聞いていたのだろう。変な関西弁を話す容疑者①と、カメラを手にした容疑者②が天井から顔を出した。いや、言い分と所持品、そして日頃の行いから考慮すれば、もう実行犯扱いしても誰も文句は言わないだろう。 「”やでー”じゃない!今日は兄上や平助が新しい隊士を連れて帰隊するんですよ?なのに屯所をこんな忍者屋敷みたいにして…」 「”みたい”じゃないですよ。忍者屋敷にしたんです。トラップ盛りだくさんにして。ちなみに烝君監修です」 「無駄に筋金入り!?」
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