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「俺も残党狩りに行きたいー」
ペシッ、ペシッ、
「駄目です。兄上は局長なのですから。屯所に構え、何かが起きた際、迅速に対応して頂かなければなりませんから」
ペシッ、ペシッ、
「山南さんに任せればいいじゃあん、昨日の夜みたいに。山南さんの方が冷静だから、何が起きても対応してくれるよー」
ペシッ、ペシッ、
「駄目です。山南さんは出動したいのを我慢して、ずっと屯所で待機…もとい、屯所を護っていてくれたんですよ。なら、夜が明けた今は、山南さんが出動するのは当然の権利です」
ペシッ、ペシッ、
「それはそうだけどさー」
「かーつ!」
ペシーン!
「いだっ!!」
「口答えしない!する暇があったら手を動かす!」
「はい…」
「それに、池田屋に初めに突入したのは兄上の部隊だったというのを忘れましたか?その兄上が報告書を書かなければ、一体誰が書くというんですか」
ペシッ、ペシッ、
「う…」
ペシッ、ペシッ、
「それに江戸の方にも、今回の件について早急に手紙を書かなければならないんでしょう?義姉上(アネウエ)も父上も佐藤さんも小島さんも皆心配しているでしょうから、報告書ついでに書いてしまいましょう」
ペシッ、ペシッ、
「あー!分かった!分かった、分かったから!!背後で板切れペシペシするのやめて!!」
「ひー!」と半泣きになりながら、報告書に筆を走らせる新撰組局長・近藤勇。
そんな彼の背後に立ち、座禅時に使用するような巨大な笏(シャク)を弄びながら監視するのは、新撰組副長助勤・近藤明日夢。
この不甲斐ない局長の弟である。
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