第漆譚 伊東甲子太郎の性癖

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擦れ違いざまに明日夢はハリセンを振り回し、彼らのブッ飛ばしを試みる。まあ、相手は新撰組最強を謳われ、一方は忍を疑われる男たちだ。当たるなんてハナから思っていないが。 「はああ…いいです、その思い切りの良さ…最高です。避けるなんて勿体ない事しませんから、その勢い、僕にブチ当てて下さい!」 そんな台詞を伊東は、興奮で鼻息荒い状態で言った。 「明日夢!!ヤツの狙いはお前だ!!俺たちを解放してヨソでやれ!!」 「逃がしませんよ新八さん。あの人は二番隊の伍長だそうじゃないですか。自隊の隊士の責任は、きちんと組頭の貴方にも取っていただきますよ」 「知らねえよぉおお!!」 「ドタドタドタドタうるせえぇええ!!廊下を走り回るな!!」 あまりの足音に我慢が出来なくなったのだろう。障子戸を勢いよく開け放って、土方が廊下に出てきた。 「!土方さんどけて下さ」 「お前らが静まれ」 「「!!」」 「「ぶっ!!」」 そう言うと土方は、それぞれと衝突する瞬間、明日夢を肩に、山野を小脇に抱えた。そして伊東に関しては、顔面に足の裏を押し付ける形で騒動を収める。ちなみに永倉はというと、土方が足を構える直前、それにつんのめって庭にダイブした。 「廊下を走り回るんじゃねえ。お前がいつも平助やら新八やらに言ってる事だろ。それを本人がやらかしてどうすんだ…ったく」 「その…ハリ倒したらハリ倒したで、余計に悦ばれそうで…すみませんでした」 「……まあ、否定は出来ねえな…」 土方の足元の無防備に横たわる伊東。その顔には土方の足跡と、恍惚とした笑みが浮かんでいたそうな…。 「いつも思うんだけど、土方さんって明日夢には甘いよなー。明日夢も土方さんの前ではしおらしいし」 「気のせいですよ新八さん」 「ちょっ、ちょっ、明日夢ッ!ハリセンの柄でグリグリすんなやあああ!!」
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