第壱譚 近藤明日夢の憂鬱

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「明日夢ー、終わったー」 報告書を書き終え、ぐったりと文机にうつ伏せる近藤。 「はい、ご苦労様です。では次に、江戸へ送る手紙をお願いします」 「えー!今すぐ!?」 そんな彼から書類を受け取り、目を通しつつさらなる仕事を告げる明日夢。一方その兄貴は、ガバッと音を立てて上体を起こした。 「今すぐです。江戸の人たちにとって京の情報は噂程度にしか伝わりません。安否報告も含め、こういったものは早めに出してしまった方がいいんです」 「えー…ちょっとは休もうよー…」 「…仕方ありませんね。積もる話も多々あるでしょうから、兄上のペースで休み休み書き綴って下さい。その間私は、会津本陣の方へこの報告書を提出してきます。出向は数日後ですが、本陣の方も報告書上とはいえ、当時の状況を早めに把握したいところでしょうから」 ため息をつき、明日夢は折りたたんだ報告書を懐にしまう。親族への手紙に関しては、せかしてしまっても仕方がない。 加えて、昨夜の戦闘の疲れもあるだろう。これ以上圧迫するのは酷というものだ。 「帰りに茶菓子を買ってきますから、遅くなると思います。手紙自体は明日の朝一番に託すつもりですので」 「うん。行ってらっしゃい」 茶菓子と聞いてテンションの上がった近藤は、笑顔で明日夢を送り出した。 しかしその弟は、一瞬で兄の前から姿を消した。 「え!?明日夢!?」 慌てて部屋から廊下を覗き見る近藤。しかし彼も体勢を崩し真っ逆さまになる。 「兄上…重いです…」 「うそん!!何でこんな事になってんの!?」 明日夢の上でようやく状況を把握した近藤。局長室前の廊下が崩壊し、その穴の底に明日夢がいたのだ。 「撮りました烝君!?近藤さんのも撮りました!?」 「撮ったで撮ったで総司はん!局長のもバッチリや!」 「何してんですかアンタらは」 ガッシャーン!! 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー!!」」 決定的瞬間をキャッチしたのもつかの間。それが入ったカメラは明日夢のホームランボールとなって、廊下の壁にめり込んだ。もちろんゴム製ではないので、バラバラと床に散っている。てか、このコはいつの間に兄の下から脱出したのだろうか。 「俺のカメラ…頑張って小型化、性能upした俺のカメラが…」 「なんて事してくれるんですか明日夢君!せっかく近藤さんの写真まで撮れたのに!引き伸ばして壁に貼っておくつもりだったんですよ!」
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