第壱譚 近藤明日夢の憂鬱

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「“なんて事”はこちらの台詞です。廊下に落とし穴仕込んだ挙句、落ちたその決定的瞬間を写真に収めるなんて、趣味が悪いにもほどがあります。その悪趣味をもっと別の方向に有効活動して頂けませんかねえ」 カメラが破壊された事を嘆く諸士調役兼監察方の山崎烝と、近藤の写真がおじゃんになった事を憤慨する副長助勤の沖田総司。 「せっかく近藤さんも撮れたのに…おにー、明日夢君の鬼ー」 「監察の仕事でも使お思てたのに…おにー、明日夢はんの鬼ー」 「仕事だけに使用してください」 イタズラ仲間の二人は同じような台詞を吐いて、ショボーンとした様子で去っていった。 「…確かにカメラはおじゃんになったんやけど…残念がる事ないで総司はん。実はあのカメラ、撮った写真がすーぐ出て来る構造にしとったんや。せやから、写真自体はここにあるんや」 「ホントですか!!」 「せやで。これが明日夢はんで、これが局ちょ」 チュイン! 「「………」」 「ちっ。外したか」 こっそり懐から出したのもつかの間。その写真すれすれを例の笏が通り過ぎていった。あと数センチで、顔の部分を持っていかれるところだっただろう。 「あー!!ちょっ、明日夢!何して…って、俺の髪!!俺、なんかした!?」 写真は無理だったが、明日夢の笏は“かみ”は“かみ”でも、副長助勤を務める永倉新八の頭髪とバンダナを捕らえ、壁に衝突して粉々に砕け散るという壮絶な最期を遂げた。彼が活躍した証は、永倉の頭にハゲという形で残ったのであった。 「…って、残ってたまるかあああ!!」
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