第壱譚 近藤明日夢の憂鬱

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「さて…次はなんて書きましょうか。私は兄上と違い、そうポンポンと話題が出てくるような性質ではありませんから…」 筆を休め、頬杖をつきつつそんな事を呟いていると、ミシミシという音がし、振り返れば、押し入れの戸が外れ、中の物が雪崩のように崩壊していた。 「………あー…そうだ、この件がありましたね…。ここで結んでしまい、追伸部分にこの件を書いてしまいましょう」 深々とため息をついた後、文机に向き直り、再び筆を走らせ始める明日夢。 「“追伸。私は身を固めるつもりは一切ありませぬ故、文をお送りになるたびに大量の見合い写真を付属させるのを止めていただけませんか。”…っと。…ここに記したからといって、必ず来なくなるかといえば、そうではないでしょうけど…」 したため終え、明日夢は再び後ろを向いた。見合い写真雪崩は未だに止まらず、さらに一冊、奥から転がり落ちてきた。 「これ以上届くと、もう押し入れの底が抜けるかもしれませんね…。どうしよう…本気でどうしましょう、これら…」
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