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「帰りてぇ」
「早いよ。来たばかりでしょ」
学校に着き、何時ものように下駄箱で上履きに履き替えながらボヤいていると、後ろから声がかけられた。
振り向くと苦笑している少年と目が合う。
「おはよう」
「おぅ」
こいつは六道 仁(ろくどう じん)。関係は小学校の頃からの腐れ縁で、所謂幼なじみってやつだ。
同じ無能力者ってこともあって未だにこいつ以上に仲良くなった奴はいない。
「何?何かついてる?」
「いや、来週テストだろ?お前の調子はどうかなって思ってさ」
「ふふふ、今回こそ平均点を越えてみせるよ!」
仁が胸を張って答える。
今の言葉だけだと仁の成績が悪く感じるかも知れないが、この男は別に赤点常習とかの問題児では無い。
かと言って成績優秀な人間でも無いのは発言の通りだ。
ハッキリ言えば普通の人間だ。
ただし、ちょっと可笑しいレベルで。
「まぁ、今回も平均ド真ん中を期待してるぞ。Mr.スタンダード」
「うるさいなぁ。何か取っちゃうんだから仕方無いだろ?」
仁はガキの頃から何をやらせても確実に平均ド真ん“取る”為、もう一種の呪いだと思う。
幸い…といって言いかは不明だが、似たような力はこの世界に溢れているしな。
上を見れば人が空を飛び、隣を見れば履き替えた靴がひとりでに下駄箱に仕舞われていくこの世界で、他人に平均点しか取れなくする呪いの力が一つや二つあっても可笑しくは無い。
…あってもこいつにだけ使うメリットは分からないが。
使いたくなる気持ちは俺にも分かる。
「なになに?何の話??」
「どわっ!?燐!!?」
仁の背中から少女の首がひょっこり生える。
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