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「いかにも、ド=ミュラー元最高顧問だ。大尉が皇女の手の者である証を見せて貰いたい」
アスターが懐から印綬を取り出して手渡す。印鑑を渡されると思っていたド=ミュラーが、一瞬だがいぶかしげに視線を返す。
だがすぐに表情が変わった、特別なあしらいがそれを本物だと告げていた。立場柄真贋を見定める自信が在った。
「サー・アスター、これは貴方にお返しする。我々はどうしたら良いかな?」
虜囚の辱しめを受けていたにも拘わらず、その立ち振舞いには、やはり圧倒的なまでの威厳と品格が漂っていた。個人の資質までは決して奪うことが出来ない。
「馬車が用意されているところまで御足労願います」
少し歩かねばならない、承認を得るとすぐに出発した。
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