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「え、何?」
「こっちの話」
行き交う人は近所の家族がほとんどだろう。
人が多い場所よりはこんなところのほうがかえって互いが親密に感じる。
そう考えて、自分が思っているより紘斗との距離が近すぎると気づいた。
姫良の手を包みこむ紘斗の手が温かすぎて、かえって不安になっていく。
鳥居を出ると紘斗の手を離して立ち止まった。
「姫良?」
「やっぱり……このまま帰る」
「わかった」
紘斗はうつむいた姫良を見おろしてあっさりと返事した。
姫良が顔を上げると、いつものように紘斗の表情からは何も読みとることができない。
怒っているようでもないが手を繋ぐのはためらわれ、黙ったまま姫良は紘斗のあとに従った。
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