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黒い鳥が、少年の視界を不意に奪った。
特に変哲もない山の麓に、この世のものと思えないほどの清雅な黒い鳥。
山を降りたばかりの少年の暗く澱む目に、それはひたすら、綺麗に映った。
黒い鳥は、聖なる翼を全て失っている。それで人真似をして、地上にいるのだろうか。そして傍らにいる人間と助け合う姿は、同じように暮らしていた少年の郷愁を誘った。
地平に萌ゆる、気高き黒い鳥。その温かな赤の眼を、血溜りのような紅い涙が澱ませる。あまつさえ清らな黒の身を、鳥は自ら穢そうとしていた。
だから少年は、迷うことなく剣を取った――
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