ある夏休み

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それらは定位置に輝き、星座という形をとる。 乙女座、さそり座、天秤座、へびつかい座…。 この季節にだけ、夏の夜にだけ現れる空という巨大なキャンバスに織り成す壮大な絵画だ。 僕は竿を置いて寝ッ転がってそれを待つことにした。 背中がホカホカと暖かい。 太陽の光に暖められた、コンクリートがじんわりと優しい暖かさを伝えてくれる。 コタツゃ電気カーペットのような、包み込むような暖かさ。 時折吹く潮風が髪を揺らす、焼けた肌に心地よい。 友達はまだ釣りを続けているのだろうか。 僕の周囲には誰もいない。 聞こえてくるのは絶え間なく打ち寄せる波の音だけ。 どこからか流れてきた雲がうっすらと月にかかる。 明日は雨が降るかもしれない。 『なにしてんの?』 不意に声がかかった。 ちょっとまどろみかかっていた僕は、ハッとして起き上がった。 僕が見た先には 僕と同い年くらいの女の子が立っていた…。
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