ある夏休み

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でも今は違う。 言葉のキャッチボールがリズムよくテンポよくできている。 女の子相手に、それも初対面の。 「あたしも好きだょ」 『え?』 「空と海、ずっと見てたりする」 『そう。いいよね、僕はこんなに海と空がきれいだったなんて知らなかった』 恥ずかしいくらい素直な気持ちを僕は話す。 ふふふ…と彼女が笑った。 僕の知ってる女の子はいつも何かを計算しながら笑ってる気がする。 自分がどう見えてるか。 笑いかけた相手は自分を見てどう思うか、そんな計算。 彼女の笑い方は違った。 僕は女の子がこんな風に笑うのを見たのは初めてな気がする。 「海と空を見たことなかったの?あたし毎日見てるよあなたは見ないの?」 『見るよ…でもこんな風だったなんて知らなかった。空は晴れていれば青、曇りなら灰色、夜になったら黒くなる、海はいつも青色、そう思ってたんだ。』 「へぇ信じられないなぁ夜でも空の色は違うのに」 『そうなの?』 「そうだよ。日が落ちたばかりの空、星が全部出た空、月が中心にきたときの空、夜が終わりかけたときの空、みんな違った色をしてるんだょ」 『海も?』 「もちろん」 『そうなんだ…。知らなかったな』 「そぅ…。じゃあ今日はずっと見ていけば?海と空」 「・・・うん。そうしようかな」 いくら夏休み中でも外泊なんて初めてだ。 ましてやここは友達の家ではなくて屋外だし、一緒にいるのはまったく知らない女の子なのに僕はそう答えてしまった。 きっとこの夏の夜と海がそう答えさせたのだろう。 「じゃあ、あたし毛布持ってきてあげるよ。夜は少し寒くなるから。雨は…今日のうちは降らないみたいね。ご飯は?もってないよね?」 『うん、持ってない。この辺にお店あるかな?』 「いいよ、ついでになんか持ってきてあげるから。じゃあここで待ってて」 そう言って 彼女は駆け出して行った。
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