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記憶の中の父は、いつも仏頂面をしていた。
ただ、会社と家を往復する毎日。
黙々と、文句も言わず働き続けた。
自分の身体が壊れるまで―
父の入院費。
家族の生活費。
自分達の学費。
"母のために"進学を諦め就職した。
"妹のために"毎月給与の大半を振り込んできた。
もしも父が身体を壊さなかったら、どんな未来が待っていたんだろう。
折に触れそう考えてしまう自分が、他の誰よりも嫌いだと思った。
自己嫌悪という名の、消えることのない棘は。
今もなお、心に深く突き刺さったまま―
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