明石修治という男

3/11
前へ
/37ページ
次へ
港町として有名なある街、海岸沿いの裏通りにあるダイニングバー「ルナ・ノーチェス」は、今宵も常連客で賑わっていた。 「いらっしゃいませ」 バーカウンターの中、鮮やかな手つきでシェーカーを振る一人のバーテンダーがいる。 明石修治、25才。 短い黒髪。 優しげな目もと。 彼の容姿には品行方正な好青年、という言葉が良く似合う。 白のシャツに黒の蝶ネクタイ。 黒のベストにズボン。 店の制服さえも、彼が着こなすと清潔感2割増に見えてしまうから不思議だ。 「明石さん、今日も爽やかだね」 「井上さんも格好いいけど・・・」 「付き合うなら断然明石さん!彼女の事大切にしてくれそう」 穏やかな性格もあって、店を訪れる女性客から「お付きあいしたい店員ナンバー1」として密かな人気を集めているのだが、本人だけがその事実に気づいていない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加