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13時半すぎ、店に着いた修治を予想外の人間が出迎えた。
「修にい!午後休講になったから来ちゃった」
今年、自宅近くの福祉系大学に進学したばかりの妹、沙織である。
「沙織・・・予告なしで来るのやめろって言ってるだろ」
厨房から顔を覗かせた店長が笑顔で取りなした。
「修治くん、私が店内に入れたんだ。そう怒らないでやってくれないか」
修治は高校卒業後すぐ、この店に就職している。
事情があって当時中学生の沙織も、よく店の休憩室で勉強しながら自分の退勤を待っていた。
その頃からずっと、店長は妹の事を温かく見守ってくれている。
「店長、いつもありがとう!」
沙織が礼を言うと、店長は"お昼ご飯まだだろう?ハヤシライスを作ってあげるから待っていなさい"と再び厨房に戻っていった。
すると最近早めに出勤するようになったウエイターの井上誠一が、なれなれしく沙織の肩を抱いた。
「沙織ちゃんももう大学生か。綺麗になったね」
条件反射のようにキザな台詞を口にする彼を、修治はしっしっ、と追い払う仕草をする。
「おい誠一、妹にひっつくな」
「人をバイ菌扱いすんなよ」
誠一にさらっと切り返されたので、最新のネタでからかってやることにした。
「お前のスマホで証拠写真撮って、彼女さんに写メを送ってあげよう。だからスマホを。ついでにパスワードも」
「誰が貸すか!」
「誠一さん、本命の彼女出来たの?」
すかさず沙織が質問を投げかけると、誠一は気まずそうに目をそらした。
「え・・・いや、正確にはいわゆる親しい友人止まりというか・・・ハハッ」
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