第1章

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 そのティーセットを見た瞬間、ニトレアの右の眉が、ピクリと動いた。 しばらく沈黙した後、ニトレアは無言で部屋を出て行った。  シタキリー男爵がドキドキしながら待っていると、ニトレアは美しい木箱、それもシタキリー男爵が持ってきたのと全く同じ木箱を持ってきた。  シタキリー男爵の前にそれを置き、おもむろにそのふたを取った。 中には、シタキリー男爵が持ってきたのと全く同じ、白く美しいティーセットが入っていた。 「これは国内随一の陶器職人リトリスターの最高級品、その名も『白貴婦人』という名品です。  私の15歳の誕生日に、国王陛下よりお祝いで頂戴した品ですわ」  そう言ってニトレアはニタリと笑った。 その背後にシタキリー男爵は、 「なかなかええ根性しとるのーこらワレ」 という字の揺らめく炎を見た! 「閣下、私じつは日課で、毎朝宮殿のバラ園まで馬車で散策に行っておりますの」 「は、はい」 「明日から御者、よろしくね」  こうしてニトレアは、超イケメン御者を一人ゲットしたのである。
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