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しかしダイダラー・ボーチ子爵はくじけなかった。
涙を拭い、さらに砂漠の奥地へ向かう。
だがやがて水は尽き、灼熱の砂漠に倒れ込んだ。
「あぁ、私はここで死ぬのだ」
ダイダラー・ボーチ子爵がそう思いながら、残酷なまでに青い空を眺めていると、不意にその視界へ、人影が割り込んできた。
「け、卿は、ダイダラー・ボーチ子爵ではないか!」
突然自分の名前を呼ばれ、ダイダラー・ボーチ子爵は驚いて起き上がった。
ひどく日に焼け、砂漠の民の衣をまとって、随分痩せている。
しかしその顔は、紛れもなくピーチア公爵の子息モモータスであった。
彼らは貴族の子弟学校の学友だったのだ。
今、そう決めた。
「おぉ、モモータス様!」
「なぜ卿が、このような所へ……」
二人は共に涙を流して抱き合った。
ダイダラー・ボーチ子爵は、モモータスに事情を説明した。
「そうか、卿もあのニトレア姫に……」
モモータスは爪を噛む。
「モモータス様も?」
ダイダラー・ボーチ子爵の問いに、モモータスは苦い顔で頷いた。
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