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ニトレアは目を少しうるうるさせ、深呼吸し、もう一度ティーカップを持って、芳しい紅茶を一口含んだ。
ふわっと広がる適度な苦味と渋み、そして華やかな香り。
「おいしい……」
ネットの世界にはほんとに色々な情報があって、紅茶のおいしい入れ方もすぐ見つかった。
いい時代になりました。
というわけで、ヴェルサイユの紅茶は文句なし(かなり出来レースだが)の合格だった。
その頃、玄関の呼び鈴が鳴った。
執事のトシオリーが迎えに出ると、シドバードが一人、若干気恥ずかしそうな顔で立っていた。
黒いタキシード姿で、白い紙の箱を抱えている。
いつもの騎士の姿も凛々しいが、鍛えられたスリムな体にタキシードは、驚くほど品格があり美しかった。
「ニトレア殿ご所望の品をお持ちいたしました」
「イチゴたっぷりのショートケーキでございますな。
イチゴの産地は?」
「はい、岐阜羽島です。
最高級品を急ぎ取り寄せました」
物によっては一粒5万円もする、桐箱入りの最高級品である。
「あぁ、小粒ながら濃厚な味ですな」
「あ、いえ、かなり大粒の物でして……」
「ええ大粒ですな」
不意につむじ風が吹き抜けた。
「……あー、まぁ、その、姫のお口に合えば幸いにございます」
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