第1章

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 シドバードは真面目で、ヴェルサイユのような意地悪も言わない。 執事のトシオリーには、その微妙な空気が辛かった。 トシオリーは人知れず泣いた。  シドバードが食堂へ通されると、ちょうどニトレアがヴェルサイユの紅茶を半分ほど飲んだところだった。 「やぁ、シドバード」 「これは、ヴェルサイユ様もいらっしゃいましたか」  例の馬術大会以来、イケメン二人は仲がいい。 あまり貴族らしくない気さくなヴェルサイユと、誠実な騎士シドバード。 身分を超えてともに認め合う二人の姿を、ニトレアは美しいと感じた。  もっとも、イケメンだからだが。  後に、メイドは証言する。 ※プライバシー保護のため音声を加工してあります。 「あのお姫様は、まぁあれですよ、N・Tのことですけどね、言ってたんですよ。  あの二人はほんとに美しかったって。  あれがブサイク二人組だったら、手榴弾投げつけてやったでしょうねって。  私ちょっとドン引きで~」  そんなニトレアの心の内はともかく、シドバードは持ってきた紙の箱から小ぶりなデコレーションケーキを取り出した。 バニラとブランデーの香りがふわっとただよい、またその見た目も、キラキラしていてとても美味しそうだった。
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