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崩月は首を傾げながら言った。
「……御影、何度も言うが、俺はお前の兄じゃない」
「でも、兄のような存在」
「……………………」
深い溜め息を吐く色無。
もう何度目になる訂正か、分からない。
しかし、物心付いた時から、家族がいない崩月御影にとっては、直感的にそう結び付けるのも仕方の無いことなのかもしれなかった。
雛鳥の『刷り込み』ーーじゃないけれど、彼女が目を開いた瞬間には、既に万能家達しかいなかったのだから。
弱肉強食の掟に則るかのように、または、大物食いの掟に則るかのように、崩月御影の両親を惨殺した強者達は、万能家の手によって一人残らず食われたのだから。
(そう言えば、思い出してみると、俺達が戦ったのって、確かバンパイア、または、バンパイアハーフ達だったよな)
つまり、あの時共食いのようなことが繰り広げれていた訳だがーー
(良く生き残れたなぁ……俺達)
怪奇の王、最強の妖怪と謳われる鬼を相手によくも生き残れたなぁ、と染々と思う。
あの時は、逆にこちらが食われていてもおかしくなかったのだ。
そして、その感想は、自分達だけでなく、崩月にも向けられた。
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