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高校では暴君の如き有り様だが、万能家達の前では年相応の大人しげな少女だ。
子供が親の前で甘える……ようなものだろうか?
だとしたら、随分年の近い親子だ、と苦笑してしまう。
「学校は楽しい?」
不意に、撫胸が言った。
その台詞は、まるで母親のようだった。
「そうねぇ、あっ、そうそう、最近面白い子が転入してきてさ。今学園中で話題なのよね」
そう言う意味じゃあ、退屈しないかもーー崩月は黒い目を細めて言った。
「凄く楽しい」
その言葉だけで、撫胸も色無も十分に満足だった。
崩月御影の右手には革製のグローブが嵌められている。
特別、と言う訳では無い。大した設定と言う訳でも無い。
特別と言ったら、崩月御影と言う彼女の存在自体特別だし、設定と言ったら、冗談かと思う程に盛られた少女である。
「そんなに酷い火傷なの?」
ある日、友人にそう訊かれたこともあった。学校での数少ない友人だ。
この間、苛めていた生徒に少し叱った後、ようやく登校することが出来た。
クラスではあの男子生徒もすっかり怯んで手を出さないでいる。
「まあね。でも、もう痛くないから平気」
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