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ましてや、バンパイアならば尚更だった。
ギラギラと照り付ける太陽光は、崩月の肌を容赦無く焼き、体内の水分が一瞬の内に蒸発したのではないかと錯覚させるくらいに攻め立てる。
「まぁ……暑くないと言えば、嘘になるわねぇ」
と、虚勢を張る崩月。張ったところで、事態は何も変わる訳では無いのに。
「ねぇ、安土。今年の予算では、会計の働きで財政は上々のはず……よね?」
発汗と言う生理現象は最早隠せるものではなく、ダラダラと流れる汗をしつこく拭う崩月。
一方で、崩月の同僚の副生徒会長であり、彼女の良き理解者、親友の青桐安土も同様に額の汗をタオルで拭きながら、
「うん……とは言え、まさか学園中の冷房が故障とは……」
渋い顔をしながら、教室の隅にある、ただの鉄の塊となった冷房を一瞥して言った。
何でも学園中の冷房はほとんどが同時期に買ったらしく、壊れるタイミングも大体一斉に、なのだそうだ。
そして、会計が上手に遣り繰りして生まれた予算をその冷房の修理に当てる訳なのだがーー
「あー……これは駄目ですねぇ」
修理業者の中年男性は苦い顔でそう告げた。
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