弱肉強食

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 「型が古い上に、あちこちがもうボロボロだ。逆によくぞ今まで持ったな、と言ってあげてください」  「……………………」  その宣告に、ある生徒はその場で倒れ(熱中症)、またある生徒は壮絶な表情で笑い出した(精神的ショックによるもの)。  「流石に学園全ての冷房を買い直すだけのお金は、ねぇ……」  ばつの悪そうに下を向く青桐に、崩月は何も言えなくなった。  結局のところ、買い直す冷房は、急患の生徒のために保健室だけとなった。  保健室の先生だけが手を上下させて喜ぶ姿を見て、無性に腹立ったことはしっかりと覚えている。  「で……あなたは大丈夫?」  崩月は革のグローブを嵌めた方の手で青桐安土の首を指差す。  青桐はいつもファッションなのか、お呪いの類いなのか、首に赤いリボンを付けている。チョーカーのようなものだろうか。  「首は汗疹とか出来ると厄介よぉ……」  驚異的な回復力を誇るバンパイアの崩月にとって、それは全くいらない心配だったが、青桐は違う。  健康的な肌に、バランスの取れた体躯。柔らかい雰囲気が、ウェーブのかかったツインテールとあどけなさの残った顔付きから醸し出されていた。
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