崩月御影

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 「そう驚かないでよ、むしろ、あんたがクラスメートにした酷い苛めの数々に比べたら、軽いものよ? 全身の80パーセントの骨を折られるくらい」  80パーセント、それは心臓や脳を守る本当に大切な部分を除いて、だろう。  小刻みに震える度に青紫に変色した皮膚が、かつて経験したことの無い激痛で千切れそうになる。  そう、この男子生徒は崩月御影の友人のクラスメートであり、その友人を自殺未遂にまで追い詰めた張本人である。  勿論、生徒会長として自分の学舎の徒を自らの手に掛けるような真似はしない。  「兎はもっと我慢するんだよ、あんたは情けないなぁ。罰として、独りでこの体育館倉庫の中に取り残されてみる? 確実に内出血で死ぬけどね」  崩月に雑学はあれど、医学知識は無い。だから、これはハッタリだ。  だが、痛みで意識が朦朧としている彼にそれを冷静に判断する力はない。  「た、助け……助けてください! お願いします! 何でもしますからぁ!!」  涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を何度も床に叩き付ける。鼻血も混ざったが気にしていられなかった。  死の恐怖はそれ程までに人を狂わせる。
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