崩月御影

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 死の恐怖は親友同士を殺し合わせることもある。  死の恐怖は恋人同士を憎み合わせることもある。  兎は寂しくて死ぬと言うが、人間は怖くて死ぬ。  恐ろしくて、人は死ねるのだ。  「私は生徒会長だ。生徒を殺さないわ」  ただーーと。  崩月は漆黒の瞳を大きく見開き、  「次やったら、私はあんたの全身の骨を砕く。粉になるまで、風と共に散るまで。忘れるな」  男子生徒を恨みがましく睨み、それからーー  「えいっ」  実に軽い調子で、自分の右手で、自分の腹のど真ん中を抉った。  「……………………へ?」  痛みと疲労で憔悴しきった男子生徒は、その光景に目を疑い、考えることを放棄した。  もう、何が起こっているのか、自分には到底理解出来ない。  だから、せめて目の前の現実だけはしっかりと目に焼き付けた。  グチョッ。  グロテスクな効果音と共に、崩月は自分の腹からおびただしい量の血液を抜き出した。  噴水のごとく、彼女の内臓から噴き出る鮮血を、彼は頭から豪快に浴びた。  すると、瀕死の状態だった彼の体は、健康で綺麗な体に戻っていた。  「ここでのことは内緒ね」
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