第2章『立ち上がりの疾走者』

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聞いた事はある。 数は少ないが、自分の国にもいたという存在だ。 魔術師。 彼らは己の体を使っての攻撃ではなく、魔法という、不可思議なものを利用して、攻撃だけならず、回復、援護、様々なものに対応できる存在だ。 そして、この足止めしている氷も、その識者と思っていた魔術師が行った魔法によるものだろう。 この足止め自体には何の脅威もないが、しかし、状況が脅威だ。 目の前には矢が迫り、例えそれを避けても特大剣がある。 それを動けぬこの状況で受けるのだけは、確実に回避せねばならない。 故に、 「――」 男は、刀を捨てた。 ◆ 特大剣を持って二度目の突撃を行ったレンは、男が自身の武器を捨てたのを見た。 ……降伏した? 一瞬だけ、そんな事を思ったが、しかし、それは男の、頭部の防具の隙間から見えた目で違うと判断した。 鋭いのだ。 その目の中にはまだ闘争の色がある。 だから、レンは己の武器を全力でぶつけた。
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