第2章『立ち上がりの疾走者』

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男はまず先に、到達するのが早い矢に対しての対応をする。 対応、といっても身を半身にして、ただ避けるだけだ。 だが、その半身は足が氷で氷結され、動くのは上半身だけだ。 故に、避けても次の特大剣は回避が出来ない。 だが、回避はしない。 それは、その必要が無いからだ。 「――!」 矢が、顔面の横をすり抜け、突撃してくる特大剣が頭上に振り落とされる。 迷いが無く、全体重が掛かった全力の一撃だ。当たれば死ぬだろう。 だが、それでいい。 そうでなければ困るのだ。 そうして、特大剣が来た。 ……今! 男は、その振り落とされる特大剣に対し、半身となった体から手を伸ばし、振り落とされる特大剣の横腹に当てる。 そして、そのまま己の防具の装甲を頼りに〝流し〟、体ギリギリの側面へと落とした。 そこは、男から見て右足のすぐ側、ほんの数センチ横だ。 そして、そこに落とされた特大剣はその威力そのままに大地を砕き、飛ばした。 ◆ 大地が揺れ、砕かれ、飛ばされる。 そして、それは男も同じだ。 砕かれた大地は男の足を氷結していた氷の魔法も砕き、氷の線で繋がっていた杖とも離され、魔法の供給源を断たれた氷は溶けるように消えていく。 足を拘束していた氷が無くなった男は、その砕く衝撃に逆らわず、地殻から逆八の字に割れた大地を利用して兵士たちの上を超えるようにして、夜天を跳躍する。 そして、一緒に飛ばした刀と荷物を空中で掴みながら林の中に着地、一気に疾走した。 残ったのは割れた大地を見つめる特大剣持ちと、男の去っていった林を見つめる二人、そしてその彼女達を見守っていた兵士たちだけだ。
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