第1章『東の旅人』

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深夜、男は己の武器の手入れをしていた。 己の武器である長刀は、代々男の家系で使われてきた刀だ。 形は古いが、大事に扱われ、そして耐え、常に使い手に応えてくれた刀だ。 男はその刀を丁寧に拭き、やがて手入れを終えると静かに鞘にしまい込んだ。 が、 「――!」 男が何かに気が付き、己を照らす光であった蝋燭を指で摘み、消し、そして身を低くした。 出来る限り己の着込んでいる防具から音を出さぬようにして、ゆっくりと戸口に移動する。 そして、外を確認する。 そこから見えたのは、月明かりに照らされ、重厚な防具を着込こみ、馬に乗った者たちだ。 彼らは列をなして動き、この廃村目掛けてやってくる。 男には、その者たちが訓練されている者たちだと理解するには容易かった。 第一動きが統率されており、何よりも装備が細かい所を除きほとんど同じである。 軍、と、そういう組織だろう。 だが、男にはその軍が妙な雰囲気に思えた。 何処か、兵士たち皆に緊張感というか、警戒心があるのだ。 男はその感情を読み取りつつ、彼らが過ぎるのを待っていた。 が、しかし、軍の列が中間に差し掛かった時、突如として背後の壁が吹き飛んだ。
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