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深夜、男は己の武器の手入れをしていた。
己の武器である長刀は、代々男の家系で使われてきた刀だ。
形は古いが、大事に扱われ、そして耐え、常に使い手に応えてくれた刀だ。
男はその刀を丁寧に拭き、やがて手入れを終えると静かに鞘にしまい込んだ。
が、
「――!」
男が何かに気が付き、己を照らす光であった蝋燭を指で摘み、消し、そして身を低くした。
出来る限り己の着込んでいる防具から音を出さぬようにして、ゆっくりと戸口に移動する。
そして、外を確認する。
そこから見えたのは、月明かりに照らされ、重厚な防具を着込こみ、馬に乗った者たちだ。
彼らは列をなして動き、この廃村目掛けてやってくる。
男には、その者たちが訓練されている者たちだと理解するには容易かった。
第一動きが統率されており、何よりも装備が細かい所を除きほとんど同じである。
軍、と、そういう組織だろう。
だが、男にはその軍が妙な雰囲気に思えた。
何処か、兵士たち皆に緊張感というか、警戒心があるのだ。
男はその感情を読み取りつつ、彼らが過ぎるのを待っていた。
が、しかし、軍の列が中間に差し掛かった時、突如として背後の壁が吹き飛んだ。
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