3人が本棚に入れています
本棚に追加
破砕音が辺りに響き、古い家の中に伝わり、やがてその衝撃に手入れのされていない家は耐えきれず、崩壊を始めた。
男はその事に舌打ちを一度小さく鳴らすと、荷物を素早い動きで回収し、崩壊を始めている家の隙間から飛び出す。
飛び出して、鞘にしまい込んだままの刀を構えれば、そこには倒壊した家と、こちらを向く兵士たちの姿が見えた。
この状況をどうするか、と男が思った時、声が男に向けて発された。
それは、複数人の声であり、しかし総じて女性の声であった。発せられた声には疑惑という感情が入っており、男に対する警戒心が感じられた。
「おい、そこの大男、何者だ? 見た所ここら辺の者ではなさそうだが」
「装備的にも敵対中のフラシーズとは違うね。傭兵の一人とか?」
「どっちでも構わないわよ、不審者が取っ捕まえる。それが基本でしょ?」
「――不審者じゃなかったら?」
「そん時はそん時よ」
マズいな、と男は思った。
今確実に不審者疑惑を掛けられている。
本来自分は旅をしてここにいるのだが、武器を構えた状態では、そう説明しても説得出来るとはあまり思えない。
そうした場合、戦闘になる事もあり得る。
戦闘技術は幾度も学び、実践し、経験しているので、複数人の相手は可能だろう。
しかし、こちらは本格的な戦闘をする必要はないので、ある程度打ち込んだら撤退する形で十分だろう。
故に、男はまず相手の〝型〟を見ることにした。
……見た所、近接系、遠距離系、それと識者の様な者が一人ずつ。
近接系は非常に太い剣幅と長い刀身を持った両手持ちの特大剣を繰り、遠距離系は自身が狩猟用に使っていたのと同じような小回りの利く弓を持っている。
一方、識者の様な風貌を持ったもう一人は傍に先端が妙な形に加工された杖を持っている。
最初のコメントを投稿しよう!