麻也慧(マヤケイ)の恋

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李音の扱いを、榊は心得ている。李音は素直になれない自分に必ず落ち込む。口調が悪かったり手を出したりした後は、決まって後悔した表情をする。 『今日は、李音の手料理が食べたいなぁ。僕の大好物作ってくれる?』 『………買い出し行くぞ。』 『やったー!よし、直ぐ行こう。オーナーさん。今回は色々とお世話になりました。いつか、母親とお礼に行くつもりです。その時は、宜しくお願い致します。』 『あぁ、一応来る時は連絡しろよ。李音にでも、俺にでもいい。どうせ、店に来るんだろ?』 『はい。では、失礼します。』 榊は本当に育ちのよさが分かる。李音が絡むと、ただの我が儘で甘えたなガキになるがな。 『麻也さん。本当にありがとうございました。』 『あぁ。今週いっぱいはユックリ身体を休めろ。来週からは、またガンガン働いてもらうからな。』 『はい!では、失礼します。』 背中を向けた李音に、つい手を伸ばそうとしてしまう。李音の体温が離れて行くのが辛くて、何とか拳を握り締めて耐えた。もう、アイツに何も求めてはいけない。 また、俺は一人に戻ったんだ。
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