第一章

2/7
前へ
/44ページ
次へ
「いやだ、もういやだ、間所……」  首を振る水野の動きと共に、茶色のサラサラとした髪が頬を打つ。 「本当に嫌だったら…やめても…いいぞ……抜くか……?」  やっと許してくれたんだ。独りよがりでは意味がない。そう自らを叱って、俺は動きを止める。  途端、水野の奥深くが締め付けてきた。 「ち、ちが……!」  思わずといった様子でそうもらすと、無意識なのだろう、水野の腰が焦れて揺れ始める。  恋人の感度のよさに内心驚きながらも、少し意地悪な響きをこめて俺は問う。 「聡…、ほら、聡……。どうするんだ…?やめるか……?」  答えはわかっていても、彼の戸惑う視線が妙にかわいくて、ことさらゆっくりと揺すり上げる。 「ま、間所……!」  水野の唇が言葉を探して動いている。  だがいつまでたってもそれは音にはならない。  とうとう水野は答えない代わりに、耳まで赤く染めて、腕で顔を隠してしまった。  そしてやっと聞き取れるような小さな声で俺を呼ぶ。  だが俺はそれだけでは許さず、嫌がる彼の手をどけて無理やりその顔を覗き込む。 「ほら、どうされたいんだ……?言ってみな、聡……」  ついに泣き出してしまった水野が答える。   「……いきたい……間所」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加