第一章

4/7
前へ
/44ページ
次へ
 この間の件。  それは `孤高の天才’が夏休みに実験を成功させた。という噂が流れたことだ。何の実験なのか。はたまたどんな成果が得られたのか。  詳しい話こそはなかったが、そんな不透明さが憶測をよび、噂は尾ひれをつけて拡散された。  そんなゴシップの中心に置かれそうになった水野を更なるゴシップで煙に巻き、見事にその渦中から連れ出してしまったのが、この水野ファンクラブの会長、柏木だった。 「もちろんだ。あの時は本当に助かったよ。……で、何か欲しいものでもあるのか?」 「欲しいものというか、人手が足りなくて困ってるの。間所君、今週の日曜日、暇……?」  そして俺達は今、客寄せパンダになっている。  ここは東京ビックサイト。  後には壁。そして長テーブルが二つ。机の上には柏木達が発行してるとんでも雑誌。  彼女のスタッフ達の隣、俺と水野は仲良く並んで座らされている。  しかも服装まで指定で、というか、もうこれはコスプレっていってもいいレベルなんじゃないだろうか……。  なんでも、`同人誌即売会’とかいうんだそうだ。  だがこの小説の売れ行きはどうゆうことだ。  女の子達が後から後から押し寄せて、人の波がまったく切れない!  活字離れなんて言わせない。ベストセラーじゃないか、柏木!
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加