合縁奇縁

2/65
542人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「お疲れ様でした」 宮城和那は薄手のカーディガンを肩に掛け直し、街灯の緩い光が足元を照らす夜道に視線を落とした。 午前中に予備校、午後からバイト。 3月の頭に始まった浪人生としての和那の新生活。 「……」 はぁ…と息を吐き出しながら闇に埋もれる黒いスニーカーを眺めていた和那は、不意に足を止めた。 家からそんなに遠くないバイト先からの帰り道でも、昼の明るさを失った道は遠く感じるものだ。 ゆっくりと頭上を見上げた和那は、控えめに瞬く星々から視線を剥がして寄り道へと歩きだした。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!