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「お疲れ様でした」
宮城和那は薄手のカーディガンを肩に掛け直し、街灯の緩い光が足元を照らす夜道に視線を落とした。
午前中に予備校、午後からバイト。
3月の頭に始まった浪人生としての和那の新生活。
「……」
はぁ…と息を吐き出しながら闇に埋もれる黒いスニーカーを眺めていた和那は、不意に足を止めた。
家からそんなに遠くないバイト先からの帰り道でも、昼の明るさを失った道は遠く感じるものだ。
ゆっくりと頭上を見上げた和那は、控えめに瞬く星々から視線を剥がして寄り道へと歩きだした。
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