542人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
ザクリと音を立てて足を止め、目の前に広がる星を映した海を眺める。
昼とは違う、恐怖を抱きそうになるほどに暗い海も、和那にとっては大事な場所だ。
灯りにつられて飛び回る虫のように、和那は引いては寄せる黒い波にふらふらと近付いていく。
肩を過ぎた辺りまで伸びた和那の黒髪が、潮風にふわりと揺らいだ。
「……」
涙のように、波の揺らぎに合わせて映り込んだ星が瞬き光を放つ。
いつ見ても不思議な世界だと、和那は緩く笑みを浮かべた。
「……あの、……」
パシャンと、どこかで水の跳ねる音がする。
突然掛けられた声に、和那はそっと振り返って瞬きをした。
最初のコメントを投稿しよう!